「精神世界の鉄人」 エッセイ集

タイトル 発行月日
マスター 4 愛の力 7/24/2001

宮城先生の授業は、私がそれまでに、学校教育というものを受けてきて、出会った、どんな教師とも、教育の仕方が違っていました。

いっけん、同じように見えるのですが、根本的に違っていました。他の先生方は、教育というものを、「何も知らない生徒に、私が、新しい知識を教えてあげる」という考えで、教えているような気がしました。

それに対して、宮城先生は、「あなた達学生は、もう既に全てを知っているのですよ。でもどうやら、それを忘れてしまっているようなので、私が、思い出す手助けをしましょう」という考え方で、授業を進めていました。

「教育」という言葉は、英語で「Education」というのですが、これの語源も、またラテン語で、「もともと知っていたことを、思い出させる。本来の能力を引き出す」という意味があるそうです。本当に語源は、奥が深いです。

先生の外見は、「小林 亜星」のような感じでした。また、先生は、とてもエネルギッシュで、声が大きく、感情的に怒ったりしました。およそ「悟った人」というイメージとは、正反対の人物でした。今考えると、先生が、怒る時はいつも、「社会の悪」というものに対して、怒っていたのであり、「つまらないこと」で怒っていたわけではありませんでした。どうやら、どんな人の喜びや苦しみ、悩みというものにも、共感できる能力が、人の10倍あったようでした。

「冗談」が多いというのも、特徴でした。これは性格もあるのでしょうが、アメリカ生活が長かったせいだと思います。「冗談」というのは、英語で「Joke」というのですが、トランプの「Joker」という言葉にも通じています。ご存知のように、「Joker」は、しばしばゲームの中で、「最高の切り札」になります。状況によっては、「万能(オールマイティ)」になるものが、「冗談」なのです。

確かに、「冗談による笑い」は、時として、どんな悩みや苦しみも吹っ飛ばす、「万能薬」にもなるようです。本当の「ポジティブ・シンキング」には、不可欠のものだと思います。「冗談」のうまい人は、「ポジティブ」な人だと思います。

ある日の講義は、人間の「性格」についてでした。ちょうどその当時、歌手の「長渕 剛」と「石野 真子」が離婚をしたばかりでした。先生は、

「いいですか皆さん、人間の性格というものは、変わるものではありませんよ。もちろん変わる部分も少しはありますし、例外もありますが、性格は変わらないと思っていた方が、うまくいく場合が多いです。」

こう言いました。そして、「長渕&石野の離婚」の例を、とりあげ、

「この性格が変わるという誤解が、離婚というものの、一番の原因になっています。例えば、石野真子が、結婚する時、インタビューで、長渕剛のことを、子供っぽいところが、いいのーと言いました。しかし、離婚の記者会見でのコメントで、あの人は子供だったーと答えています。これは、一番典型的な離婚のパターンです。」

こう言いました。要するに、結婚する前、ほとんどの人が、相手の「欠点」というものが見えるのですが、それに目をつむり、「私が、一緒に生活しているうちに、この人の悪い欠点を直してあげる」と考えることが、一番の離婚の原因になっているのではないかというのです。ほとんどの場合、その欠点は変わらず、自分も相手も傷つき、お互いに幻滅して、別れるという悲劇が繰り返されているというのが、先生の考えでした。

相手のありのままを受け入れ、「この人は、一生このままなのだ。でも私はそういう人と一緒に、人生を歩んでいくんだ」こう思ったときに、初めて結婚生活というものは、うまくいくのではないかと、先生は考えていたようです。

確かに、私の両親、親戚、兄弟、幼馴染などを見ても、30年以上たつのに、子供の頃感じた性格というものは、変わっていないようです。例外は、あまりないようです。

考えてみれば、「相手の性格を変えてやる」というのは、もしかしたら傲慢な考え方かもしれません。相手が仮に、25歳だとしたら、その性格が形成されるまでに、25年という、とても貴重な時間がかかっているのです。そして、その時間には、やはり「神の意味」があると思います。だから、やはり、そのままでいいのだと思います。

しかし、理屈では、分かっていても、実際にこの考え方を実践するのは、至難の技です。なぜなら、世の中には、「本当に嫌な奴」という人間が、たくさんいるからです。そういう人間の性格も認めなくてはいけないとうことです。

宮城先生自身も、この「嫌な奴」という問題には、いろいろと困っていたようでした。先生は、

「嫌な奴と会っても、常にスマイルは、忘れないで下さい。また、相手のいいところをなるべく見るように心がけ、それを誉めるようにしてください。時間はかかりますが、それしかないのですよ。私も毎日、イライラしていますが…。」

こう授業で話していました。でも一度、何人かでお茶を飲んだとき、こういう話をしてくれました。

「トーマ君、君は、ずいぶん嫌な人間に会ってきたそうだね? 君に特別に、そういうネガティブな人間への、対処方を教えよう。必殺技です。まず、君がもし飲み屋街を歩いていて、呼び込みのアンチャンに、勧誘されたらどうしますか?」

こう質問されたので、昔、福岡県の「中洲」に行ったことを思い出しました。その街を歩いていると、「社長ー!、いい娘いますよー!社長!」としつこい呼び込みに腕を引っ張られたことを思い出しました。それで、

「先生、自分は昔、呼び込みのアンチャンに腕を、引っ張られた時、そのまま腕力で、そいつを引きずって、20メートルぐらい歩きました。そしたらそいつは、あきらめて逃げていきました。」

こう答えました。先生は、静かに微笑みながら、

「トーマ君、私も若い頃は、君のように、腕力を使ったよ。でもね、筋肉の力などを使ったら、相手も引っ張り、自分も引っ張るから、倍の労力を使うんだよ。そういう時はね、そのまま、相手に引っ張られ、そのまま相手に抱きつくんだ。そして、太ももをこすりつけ、耳元に、熱い息を吹きかけながら、ダメ〜、ダメなの〜、ダメ〜ン! とオカマ言葉でささやくんだ。そうすると、ビックリして、もう二度と近づいてこなくなるよ。いいか、愛の力を使うんだ。最強は、愛だ!」

こう言いました。私が突っ込んで、またこう質問しました。

「素晴らしい考えですねー、でも、もし相手がホモで、抱き返してきたら、一体どうするんですか?」

すると、先生は、ニコニコ笑い、

「望むところだ! その時は、もっと強く抱き返してやれ! いくところまで、いっていいんだー! トーマ君、君ももしかしたら、目覚めるかもしれないぞー!」

こう言いました。(笑)

この「愛の力」という「必殺技」は、「本当に嫌な奴」というものに、確かに有効なようです。私はそれ以来、

「早く、この必殺技を試してみたいなー。早く、本当に嫌な奴、現れないかな? もし現れたら、抱きついて、耳の穴に舌入れてやるぞー!」

と考えるようになりました。すると不思議なことに、そう思ったとたん、そこまで「嫌な奴」とは、出会わなくなりました。やはり、「愛の力」は、最強のようです。(笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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