「精神世界の鉄人」 エッセイ集

タイトル 発行月日
マスター 5 平等 7/25/2001

宮城先生の講義は、どちらかといえば、世の中の「闇」の部分を、正確に認識し、そして、それを「光」として捉えるというような話だと、私個人は感じました。

先生は、特に、「発展途上国」という場所や「未開地」によく研究のために訪れた経験があり、それに関して、もの凄い知識と経験をもっていました。

「どの国も、どの民族も、全て優秀です。人種や国籍、文化に優劣はありません。優劣を説く学者は、勉強不足なのです。」

よくこう話していました。例えば昔、アメリカの「ケネディ大統領」が、

「アジアの農業は、いまだに、水牛や馬などを使い、焼畑農業など、遅れた農業をやっています。ですから、アメリカが、近代農業を、指導しなければいけません。」

こう主張して、タイやベトナム、カンボジア、フィリッピンなどに、「農業指導」をしたことがあるという映像を、見せてもらったことがありました。しかし、その結果は、意外なことに、アメリカ式の「近代農業」のおかげで、その土地の生態系のバランスがくずれ、害虫などが、大量発生し、大失敗に終わったようでした。試行錯誤の結果、結局、その国々の最善の農業は、水牛や馬、焼畑農業などの、「遅れた農業」だったそうです。どの土地でも、長く続いている文化には、ものすごく優れた知恵がつまっているというのが、先生の持論でした。

ある日、「子育て」についての話がありました。

「子育て」は、大きく分けて、「過保護型」と「放任型」に分けられると言っていました。はっきりとは、分けられないのですが、話の便宜上分けていました。

「どちらがいいか分かりますか? いいですか、こういう問題を考える場合、人間の社会だけで考えてはだめです。自然界に、ヒントがある場合が多いです。」

こう言いました。どういうことだろうと思っていると、続けて、

「皆さん、アフリカのサバンナに、その良い例があります。例えば、シマウマの子供は、生まれてすぐに走ることができます。それに対して、ライオンの子供は、生まれて、3〜5年も、ろくに歩けず、お母さんになんでもやってもらい、甘えています。これは、シマウマが立派なのではなく、シマウマの親が弱く、子供を守ってやれないからです。これに対して、ライオンの子供の成長が遅いのは、親が強く、子供を長い間、守ってやることができるからです。」

短期で見た場合、シマウマの子供がいいような感じをうけますが、長期で見た場合、結局、ライオンの子供のほうが、強く育つという話でした。

つまり、「放任型」で、子供を早くから社会に出して、鍛えるよりも、なるべく「過保護」に育て、社会の荒波に揉まれるのを、遅らせた方が、子供というものは、強く成長するのではないかというのが、先生の主張でした。そのためには、親には、経済力などを含めた、強さが必要だと話していました。

この話を聞いて、私が、

「先生、では金持ちの国や家庭、いわゆる御曹司、令嬢などの育ち方が、理想的だとおっしゃるのですか?」

こう質問しました。そういうふうに、この話は聞こえたからです。すると、先生は、

「違います。今のはただ、自然の流れを話しただけです。ライオンだから良い、シマウマだからダメとは、言っていません。彼らに、優劣をつけたのも、人間の偏見というものです。彼らは、ただ自然界の中での役割を演じているだけです。来週、別のビデオを見せます。」

こう言って、その日の講義は終わりました。

さて、その次の週、ビデオをまた、見せてもらいました。それは、「ペルーの山奥の貧しい魚売りの少年」の記録フィルムでした。

ビデオは、ドキュメンタリーでした。「外国のTV局が撮ったので、ヤラセは、ほとんどない」と、先生が言っていました。

ある少年の生活ぶりなのですが、7人家族の長男なのですが、両親ともに、ある事故で、大怪我をして働けず、そのため彼が、働いて、家族を食わしていました。まだ、9歳の少年でした。学校もいかず、毎日12時間以上、働いていました。

いろいろなところに行って、仕事をしていました。朝早くから、市場に行き、魚を選んで買い、それを、また村で売って歩いていました。行く先々で、子供だからといって、ナメられていました。さんざん馬鹿にされながら、仕事をしていました。

ある場面で、客から石を投げられていました。驚いたのは、その9歳の子供が、たくさんの石をぶつけられ、血を流しているのに、泣いていないことでした。

「泣いたからといって、問題が解決するわけじゃない。そんな泣いている暇があったら、その時間を僕は、仕事の時間に割り当てることにしているんだ!」

その男の子が、石を投げられたあと、TVに向かって、こう言っていました。そのあと、また、インタビューで、

「今日は、お母さんの誕生日だから、稼いだお金で、新しい靴を買ってあげるんだー。お母さんが、喜ぶ顔が、僕の一番の楽しみなんだー。その笑顔をみると、仕事の疲れなど、吹っ飛んでしまうよ!」

こう言っていました。ビックリしました。9歳の少年ですよ! 宮城先生は、そのビデオが終了したあと、いつものように、私達の前に立ち、厳しい口調で、

「皆さん、どうでしたか? この少年の生活は? 日本にはもういない少年でしょう。私が、なにが言いたいかわかりますか? いいですか、人間は、同じ20歳でも、人によって、精神年齢が違います。10歳の人もいれば、20歳、50歳の人もいます。この違いは、どのくらい密度の高い人生を歩いてきたかによって、違ってきます。私は、人間が一番成長するのは、飢餓。二番目が、戦争。そして三番目が、病気だと思っています。もちろん、この考えは、押し付けませんが…。」

そう言いました。それから続けて、

「日本を含めた先進国の人たちは、20歳を過ぎても、よく泣きます。これは、一般に、感受性が豊かだと思われていて、もちろんそれも事実なのですが、同時にこれは、弱さ、幼さでもあります。日本、アメリカ、ヨーロッパ以外の外国の人々は、そんなに泣きませんよ! 特にアフリカなど、空腹で涙も出ない人が、多いです。これは同時に、強さなのですよ!」

こう言いました。よく泣く私には、耳の痛い説教でした。そして、

「確かに、豊かな国とは、とてもいいのですが、このぬるま湯の中で、しばしば、精神年齢がいつまでたっても、進まない人も大勢います。一度、後進国といわれている国の人たちと、話してみてください。いかに彼らの中に、強さや心の豊かさをもっている人々が多いかということに、気がつくでしょう。人生で一番大切なことは、私は、精神年齢をあげることだと思っています。豊かさと引き換えに、その一番大切なことを疎かにしているのが、先進国なのです。そういう観点から、見た場合、やはり人間は皆、平等なのです。」

こう締めくくって、講義が終わりました。要するに先生は、ライオンよりも、シマウマの生き方が、「霊的」には、もしかしたら、優れている可能性もあるのではないかと言いたかったようでした。

その後、アメリカに来て、たくさんの外国人と接したのですが、やはり日本人は、他の外国人と比べて、全体的に同じ年齢だと、幼く、弱い感じをうけます。

お互いに、もっと、シッカリしましょう。(苦笑)

 

 

 

 

 

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