「精神世界の鉄人」 エッセイ集

タイトル 発行月日
いじめ 5 新天地 8/25/2001

昔、東京である企業に勤めていた時、よく会社が主催する、研修に参加しました。日本の企業には、いろいろ問題もありますが、こういう研修というものは、とても優れていると思います。会社のお金で、勉強ができるのです。こんな素晴らしい時間はありません。私は、研修が好きでした。

さて、一度、その企業から、「営業マン、実力アップ講座」とかいう研修に、参加させてもらいました。

そこで、興味深い話を聞きました。

その時の講師が、私達に、こう質問しました。

「営業マンに、一番大切な資格や、能力、性格などは、何だと思いますか?」

皆が、口々に、答えました。皆からでてきた答えは、

「明るさ」、「粘り強さ」、「おもいやり」、「まめさ」、「オープンマインド」、「礼儀」、「時間厳守」、「記憶力」

などでした。反対の、

「暗さ」、「飽きっぽさ」、「無神経」、「ずぼら」、「人見知り」、「無礼」、「ルーズ」、「忘れっぽい」

などを答える人は、一人もいませんでした。

ところが、この講師の人は、この反対の、「暗さ」や「ルーズ」、「人見知り」、「無神経」なども、十分、「優秀な営業マン」の資格になると言いました。

その講師によると、その講師が、昔、ある会社で営業の仕事をやっていた時、とっても「暗い性格の奴」がいたそうです。

あまりにも「暗い性格」だったので、会社内で友人もいなく、最初に会った時、

「こいつは、社内で、最低の成績の営業マンだろうな?」

と確信したそうです。ところがドッコイ、トップとはいわないまでも、かなり上位の営業成績を、毎月上げていたそうです。彼の周りにいるだけで、陰気になってしまうぐらい「暗い奴」なのに、どうして、成績がいいのか、不思議だったそうです。

ある日、不思議に思った、その講師は、その「暗い奴」の後をつけて、その取引先の会社に行って、彼の営業ぶりを、遠くから観察したそうです。

すると、謎が解けたそうです。取引先の会社の担当者も、なんと、「暗い性格の奴」だったそうです。(笑)

二人が、楽しそうに会話をしているのを見て、その講師は、

「そうか! 営業マンにとって、いい性格なんてものはないんだ! 大切なのは、相性なのだ。暗い人には、暗い人が話しやすいし、明るい人には、明るい人、ヤクザには、気合の入った奴、元気のない人には、元気のない人、学者タイプには、頭のいい人、おとなしい人には、やさしい人、それぞれ、人によって好みが違うんだ。明るければ、いいという問題ではないんだ!」

こう悟ったそうです。今まで、いろいろな「営業」に関する、研修を受けましたが、私には、その時の講師の話が、一番、納得できました。

要するに、その講師は、

「暗い性格を、明るい性格に変えるだとか、オッチョコチョイを、几帳面に変えるだとか、する必要はない。人間の性格に、良い性格、悪い性格などはない。」

こう言っていたのです。また、

「自分で悪いと思う性格を、変えようとするよりは、良いと思う長所の部分の性格を伸ばしたほうがいいです。また、相性の悪い相手とは、つきあわず、会っても楽しい、話がはずむという相手とつきあうように、してください。」

こうも言っていました。当たり前のことですが、大切なことだと思います。また、

「営業マンになるために、性格改造などやる必要はありません。そんなことに時間をかけるような企業はダメです。大切なのは、企業の人事部が、それぞれの営業マンの性格を見抜き、適切な環境、つまり、その営業マンと相性のいい、相手先の担当者と、取引させるようにすることです。そのために、企業には、人事部というセクションがあるのです。」

こう言いました。これは、私にとって、新鮮な考え方でした。つまり、

「無理して合わない環境で、頑張る必要はない。どんな人にも、必ず、ピッタリ合う、環境、能力を活かせる仕事場は、あるんだ!」

ということです。人生がうまくいかないと思った時は、「自分の性格が悪い」のではなく、「自分の性格に合った環境は、きっと他にある」と思ったほうがいいということです。

 

私が、沖縄のトレーニングジムに通っていた時、「キクガワ」という名前の後輩がいました。そのジムは、とてもレベルが高く、ボクサーや空手家、柔道家、陸上投てき選手、プロレスラーなどが、たくさんいました。いわゆる、「体育会系」の場所でした。そういう場所では、「強い男」は、尊敬されるのですが、「弱い男」は、ナメられ、馬鹿にされるのです。

キクガワ君は、人はいいのですが、いつもオドオドして、気が弱いので、いつも、

「キクガワ! 俺のジュース買ってこい! 急げ!」

とか、先輩方から、いじめられ、「パシリ」として使われていました。お辞儀など1回でいいところを、10回ぐらいやる癖がありました。これでは、ナメられます。(苦笑)

ジムの中では、皆、「あんな性格で、気が弱かったら、どんな仕事も無理だよ。」と陰口をたたかれていました。

ところが、彼は、大学を卒業すると、「職業安定所(ハローワーク)」で働くことになりました。すると、その職場で彼は、もの凄い出世をして、沖縄から、東京の霞ヶ関ビルで働くまでになってしまいました。

彼の友人によると、ハローワークに来る人たちは、人生で失敗したり、職場で心に傷を受けた人が多く、キクガワ君の「オドオドして気が弱く、10回お辞儀する」という性格が、「とてもやさしく、相談していて心地よい」と感じたそうです。

「悪い性格」というものは、ないのかもしれません。どんな「悪い性格」でも、その性格を活かせる環境に入れば、「最高で素晴らしい性格」に変わるものかもしれません。

余談ですが、私が、東京で失業していたころ、このキクガワ君から、電話で、

「トーマさん、再就職のことなら、僕に任せてください。先輩にはお世話になりましたから、失業手当なども、いくらでも優遇しますよ!」

と、明るい声で励まされました。(笑)

「いじめられている」と感じたら、そこで我慢せず、「環境」を変えるというのは、とても大切で、確実だと思います。もし学校でいじめられたら、転校する、または、学校なんかいかない、それでもいいと思います。その行為は、決して「逃げている」わけではなく、まさしく「新天地へ行く」のだと思います。

 

 

 

 

 

 

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