「精神世界の鉄人」 エッセイ集

タイトル 発行月日
悪魔 9 17歳 10/20/2001

今日は、気分を変えて、ロサンゼルスの「リトル東京」という日本人街の喫茶店で、このエッセイを書いています。今、土曜日の午後ですが、高層ビル街に夕日が射し、とても綺麗な景色が、窓から見えます。とても優雅な午後のひと時です。

この喫茶店は、私の大のお気に入りで、ほとんど毎日、ここで過ごします。宿題をしたり、漫画(漫画喫茶でもある)を読んだり、とても豊かな時間を味わっています。日本の音楽がバックに流れ、日本の雑誌や新聞も読め、まるで日本にいるようです。

アフガニスタンでの戦争など、まるで嘘みたいな平和な静けさに包まれています。

 

「悪魔」という言葉は、「亜」の「心」に「魔」がさすという状態を表現した言葉だそうです。この「亜」は、漢和辞典を調べてみると、もともと家を建てる時に、四角く穴を掘った時の穴の象形文字だそうで、その意味は、「下に隠れたもの」、「二番目のもの」、「上から抑圧されたもの」という意味があるそうです。従って、「悪」いう文字には、「抑圧された心」、「歪んだ心」、「欲求不満の心」、「孤独な心」などの意味があるそうです。

「社会から、抑圧され歪んだ心に、魔が入り込んでこんできて、それが表面に悪として、出現したもの」

これが、「悪魔」という言葉の意味なのだそうです。深いですね。

 

この話は、今から18年前、私が17歳の時の話です。(あれから、もう18年もたつのですねー。)

前回の「いじめ・シリーズ」で書いたように、中学時代に「いじめ」を克服し、沖縄の進学校の高校に入学した私は、わりと楽しい高校生活をエンジョイしていました。しかし、中学時代の「いじめ」が原因で、いまひとつ、「人を信用する」ということができずに、友人関係も、表面的なものになっていたような感じでした。

部活動も私の興味のある「空手」や「ボクシング」、「ボディビル」などの部がなく、しかたなく、また「帰宅部」をやっていました。

ただ、体を鍛えるのは、好きになっていたので、自宅で、ダンベルなどで運動していました。

高校1、2年は、それほど問題なく、平凡に過ぎていったのですが、高校3年生になってから、状況が変わりました。17歳でした。

この17歳という年齢は、とても不安定な年齢なのかもしれません。日本でもここ数年、この年齢の犯罪の発生が問題になったりしているようです。

高校3年になったとたん、今までのんびりしていた私も友人達も、皆、「大学受験」という現実に直面させられ、いろいろと、将来に対して、悩んだり考えさせらるようになってしまいました。

私は長男で、父が開業医だったので、将来は自分も、父のような立派な外科医になり、病院の後継ぎになろうと、漠然と考えていました。必然的に、目標は、国立大学の医学部でした。これは、当時の私にとって、高いハードルでした。

その当時は、「共通一次試験」の新システムが、導入される年でもあり、先生方も生徒も、よくそれの話ばかりしていました。私もその流れにのみ込まれ、夜は、予備校にも通い、受験勉強ばかりの毎日になりました。模擬試験で、自分の偏差値をすこしでも上げることばかり考えるようになっていました。

周りのことに目がいかなくなり、勉強や大学、偏差値のことばかり考えるという極端に視野が狭くなっている自分がいました。

禁欲的にならなくてはいけないと思い込み、遊びもTVも止めました。そして、自分の部屋にあったオーディオセットも、勉強の妨げになると思い、妹にあずけました。大学合格まで、音楽も一切聴かないことにしたのです。頭も丸刈りにして、本当に勉強に集中するつもりでした。その当時私は、何かやる時には、徹底的にやらないと気がすまない性質でした。

スケジュールを、ビッシリ決め、朝は、7時から学校で補講を受け、夜は遅くまで、予備校で勉強していたのですが、だんだん無理を重ねるようになっていきました。

その当時、私には、好きな女の子がいました。誰にも言わずに、完全な片思いでした。つらい勉強も、その女の子のことを考えると、楽になりました。

「次の実力テストで、席次が上がると、きっと、その子は、自分のことを尊敬して、見直してくれるかもしれないぞ。」

こんな暗いことを、勉強のモチベーションにしていました。暗いですねー。(笑)

毎日、悶々としていました。頭のいい子で、ムチャクチャ好きでした。

「人を好きになるということは、こんな気持ちなのか。こんなに苦しいのか。」

そう思っていました。本当に本気で、女性を好きになったのは、それが初めてでした。いわゆる初恋というやつです。しかし、自分自身にも自信がなく、なによりも、

「今は、それどころではないんだ。恋愛なんて、大学に入学してからすればいいんだ。今は、我慢だ。」

こういう気持ちをもっていました。その子とは、ほとんど話もできませんでした。

ところが、その女の子に、見事にふられてしまいました。告白する前にふられてしまうとは、思っていませんでした。

何もやる気がしなくなりました。よく自分の部屋で声をころして、泣いていました。

勉強も、好きなトレーニングも、友達つき合いも、全て虚しくなり、毎日、ボーとして過ごすようになりました。

おまけに、「受験」や「偏差値」、「大学」というものが、全て、馬鹿馬鹿しく思えてきました。挙句の果てに、「世の中」の全てのことが、嘘っぽく、アホらしく感じてきました。「家族」や「友人」、「先生」という存在も、なぜか、自分を苦しめる「敵」だと感じるようになってきました。

自分の肉体上のコンプレックスなども、なんか物凄く悪いものであるような気がしてきて、人と目があったり、話をするのが怖くなりました。だんだん無口になり、今でいうところの「引きこもり」をするようになりました。家族の誰とも話をしなくなり、食事以外は、部屋に一人で閉じこもるようになってしまいました。

「コンプレックス」、「不信感」、「怒り」、「嫉妬」、「悲しみ」、「虚無感」などのネガティブな思念や感情で、自分の精神が一杯になっていくのを、感じていました。

成績がその頃から、急激に悪くなり、物事を記憶することができなくなってきました。高校3年の夏休みが明けた頃は、もう学校の全ての科目で、赤点をとるようになりました。

担任の先生から、食事に誘われ、

「オイ! イタル、何か悩み事でもあるのか? どうしたんだ一体? このままだと、留年、もしくは退学だぞ。何かあったのか?」

こう言われました。先生は親切のつもりで言ったのですが、逆に私の不安を倍増させました。

「留年になるかもしれない。学年が下の連中に馬鹿にされながら、一年間一緒にならなくてはいけない。下手したら、退学だ。もう自分の人生は、おしまいだ。」

こう思い、夜も眠れなくなりました。夜、ずーと起きて、悩みまくり、昼間の授業中に居眠りをするという、極めて不規則で不自然な生活をするようになりました。

そのうち、だんだん人の声などの幻聴が聞こえるようになり、たくさんの妄想もわいてきました。

 

 

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